アメフト

葉柱ルイや鉄馬丈

030

葉柱ルイ

 

029

原×ルイ

差し出された小箱の中、白い布が敷き詰められた中央に小さな丸い石が1つ。

澄んだ、薄緑色の。

何時も原尾が付けている藍色のピアスによく似た、何の飾りもない裸の石。色だけが違う。

「そなたの瞳の色と同じだ」

「あ…」

頬に血が上って行く。

「ばっ…俺の眼、こんなキレイじゃねぇよ」

ゆったりと微笑む原尾の眼を見返せなくて、俯いてボソボソと答える。

「付けてくれるか?」

原尾の問いに、頷いて顔を上げる。

長い、形の良い指が顎に掛けられたのを合図に目を閉じた。

指に促される形で顎を上げる。

今から原尾の手によってもたらされるであろう、痛みの事を想う。

「っ!」

耳朶に指が触れた瞬間、ビクンと肩が跳ね上がった。堪えきれずに原尾の胸元にしがみつく。

「大丈夫。じっとしておれ」

囁かれて、額に唇の感触。

しがみついて、きつく眼を閉じたまま頷く。

冷えた指が、もう1度耳朶に触れた。

点に近い、小さな、硬い何かが押し当てられる感触。

柔らかい皮膚に、軽く沈んで。

息を詰めて、痛みを待った。

「さ、終わったぞ。」

「!?」

慌てて目を開くとそこには、満足げに微笑む原尾の姿。

予想に反して痛みは無く、耳朶にあるのは、小さな重みとくすぐったい様な微かな違和感だけで。

「あ…」

恐る恐る伸ばした指に、耳朶を回り込む様に伸びる金具が触れる。

ピアスではなかったのだと、今更ながらに気付いた。

「どうしたのだ、気に、入らなかったのか?」

隠しきれない落胆の表情に、原尾の顔が訝しげに曇る。

「違う。嬉しい。サンキュ、大事にする…」

本心に違いないのに、目を見ては言えなかった。

「悪ぃ、汗かいた。ちょっと顔洗ってくる」

きっと今、自分は酷い顔をしている。そんな自分を見られたくなくて、抱き寄せる原尾の手を振り払って、返事も聞かずに部屋を飛び出した。

原尾がしてくれるんなら痛いのもガマンできると思ったのに、決死の覚悟が空振っちゃったルイルイ。

乙女度10割増ってこんな感じで〜す♪

なかなか更新できないので書きたいシーンだけ先に書いてみました。

石は原尾が父親のお供で海外へ行ったお土産か何か。

緑の石なら何だって良かったんですが、個人的な好みでエメではなく翡翠。

原尾のピアスは(エジプトだけに)ラピスとゆ〜事にしといてください。

原尾高1、ルイ中3あたりで。

028

ヒル×ルイ

閉ざされたドアの外で、しばらくウロウロしていた靴音はやがて小さくなって消えていった。

締め切られた狭い部室の中に沈黙が降りる。

西日に炙られた部屋の空気は、酷く熱くて息苦しかった。

カバンの中から取り出したノートパソコンを操作しながら、おもむろにヒル魔は口を開いた。

「テメーにはウチの入部テストの会場の手配をして貰う。それからメンバー全員でテストに使う…オイ、聞いてんのか?」

葉柱ルイは椅子に座ったまま足を投げ出して腕を組んで。ヒル魔の言葉などまるで聞こえないようにじっと横の壁を睨み付けていた。

「判ってんのか? テメーはこの俺の奴隷なんだよ。ド・レ・イ! もっと従順な態度でご主人様の命令を拝聴しな」

「うるせェ! 500万分働きゃぁ文句ねぇだろうが! ゴチャゴチャ鬱陶しいこと言ってんじゃねぇ!」

屈辱的な言葉を浴びせられて葉柱ルイは、振り向きざまヒル魔に向かってヒステリックに叫んだ。

「んん〜〜? イケないなァ、奴隷がそんな態度じゃ。こりゃオシオキが必要かな?」

顎に長い指を沿わせ目を細める。と、ヒル魔は何の前触れもなく、手にしていたサブマシンガンの引き金を引いた。

パラタタタタタタタン

「っ!!」

組んでいた腕をほどいて、葉柱ルイは咄嗟に頭を庇う。

銃声が止んで、辺りに硝煙の臭いが立ち込めた。

腕を降ろして辺りを見回す。銃口は彼の足下に向けられていたらしくカーペットには幾つも穴が空いていたが、躯には一筋の傷も付いてはいなかった。

薄く濁った空気の向こうに、ニヤニヤと笑う顔。

「テメー、フザけやがっ…」

カッとなって席を蹴って。

相手の胸座を掴もうと伸ばした腕が、しかし次の瞬間凍りつく。

細く白煙の立ち上る銃口は、今度は間違いなく葉柱ルイの胸元に向けられていた。そしてそれは、そのままゆっくりと近付いて来る。

逃げ出したい。

そんな衝動に駆られる。

銃口から、この部屋から、屈辱的な言葉を吐きかけるこの男の前から。

だが、それは矜持が許さない。

なんとかその場に踏みとどまって。

それでも胸に銃口が押し当てられる直前。

片足を半歩、引いてしまった。

「何? 恐ぇえの?」

意地の悪い顔でニヤニヤ笑いながら、強張る顔を覗き込むようにして更に近付いてくる。

一度引いてしまえば、もう止まらなかった。銃口が近付いた分だけ、後退る。

狭い部屋の中、終わりはすぐにやって来た。背後に、壁。

鼻先に突きつけられた銃口が、ギリギリ躯に触れない近さで降りてゆく。ゆっくりと、躯をなぞるような動きで。

「…ァ」

咽がカラカラで声が出ない。粘つく口内で舌がもつれて、罵りの言葉を吐くことさえできなかった。

仰け反るようにして躯を壁で支えて。目だけで銃口を追う。

無防備な咽を辿って、鳩尾の少し上で、ソレは止まった。

ほんの数センチの距離が無限のようにも感じる長い一瞬の後、静かに押しつけられる。

雷に打たれたように大きく躯が跳ねて。

「……あ…ぁ?」

痛みに耐えるようにきつく閉じられていた目が開いて、訳が判らないといった風に自分の胸元を見ている。

「何だ、まだ熱いと思ったのか? ケケ、残念だったな。もう冷めちまってら」

次は熱いまま当ててやるよ、跡が残るように。そう付け加える。

がくんと膝が折れて、そのままズルズルと壁伝いにしゃがみ込んだ。

枯れ木も山の賑わいと言いますし。折角お問い合わせ下さったのに、裏には半端 SS が1本きりとゆ〜のも申し訳ないので。

いくら半端 SS が増えたところで見苦しさ倍増なだけのよ〜な気もしますが(笑)

夕映えは杏色の続きです。

終わってもいない SS の続きを書くのはあたしの悪い癖です。そ〜してどんどん収拾がつかなく…いやいや。頑張って書き上げますとも。

027

ヒル×ルイ R18

「今度、太陽スフィンクスと試合すんだけど」

思いも寄らぬ場所で出た、よく知る名前に、吹っ飛んでいた理性が一気に戻ってきた。

「 QB の…原尾クン? と仲イイらしいじゃねぇの、個人的に」

耳元で囁かれたのは、この場で一番聞きたくなかった名前。

「知ってるコトが有れば教えて欲しいなァ」

独り言のようでいて、絶対の命令なのだと。判っては居た。

「っ知るかッ…知ってたって、誰がテメェなんかに…っあ!」

やんわりと中心を握り込まれて、起こしかけた上半身が崩れる。

芯に沿わせたままゆるゆると動く指に、シーツに額を押し付けて悲鳴を殺す以外、何もできなくなる。

「何? 原尾、クンに義理立てでもしてんの? それとも…弱味か何か握られてるとか?」

「テメーと一緒にすん…っ!」

口を開いた途端、先走りに濡れる先端に強く爪を立てられて、今度こそ悲鳴が抑えられない。

「…っ痛…や…ぁ!」

ねじ込む様に押し付けられる爪先。

痛みに意識は遠のきかけているのに、身体だけは絶頂を訴えてビクビクと震えている。

「エロい身体してっと大変だなァ。ま、言いたくなったら何時でも言えよ?」

「…死、んでも言わねぇ」

肩を掴まれて、強引に仰向かされる。

「その強情が何処まで続くか、見物だな」

「少しは、喋る気になったか?」

喋る、何を? 喋れば楽に、なれるのか。自分の知っている、事なんて。

朦朧とする意識の下でボンヤリと考える。

名前、

年、

住んでる場所、

学校、

部活は、アメフトで、

ポジションは QB 。

自分より少し背が高くて、

口調がちょっと可笑しくて、

それから、

それから…

ずっと昔に、交わした約束。

身体を這い回る指の事も忘れて呆然と、天井を見上げた。

たった、それだけ。

力の入らない腕を持ち上げてヒル魔の胸に手を突くとノロノロと押し退ける。

「ン? どうした。なんか喋りたくなったか?」

覗き込んでくるヒル魔から、顔を背ける様に目の前に腕をかざして。

「無駄なこたヤメロ。アイツの事が知りてぇなら、他を当たれ」

声が、震える。

「知らねぇんだ」

「…泣いてんのか?」

手首を掴まれ眼前の腕を引き剥がされる。

見開いた瞳から、しかし涙は零れなかった。

「知らねぇ。俺はアイツの事、何も知らねぇんだ」

ポツリと呟く。

「もう、いい…」

汗で貼り付いた前髪を掻き上げられ、額に口付けられる。

逃れようと藻掻く躯を宥める様に抱き寄せられて、続けて鼻筋と、瞼と、こめかみ。そして唇にキス。

「…っふ」

舌の上をなぞるだけの緩やかな口付けに、抗う力が弱くなってゆく。

「っ、嫌だ、触るな…っ」

「少し、黙れ」

低く囁くと押し殺した様な嗚咽の漏れる唇を、もう一度、塞ぐ。

舌を絡めると、素直に応えてきた。

情報収集に余念のないヒル魔たん。とゆ〜話だったハズなのですが。

まぁでもルイは原尾の事、強くて賢くて正しくて云々、明らかに事実から大きく逸脱した形で認識しているので、聞かなくて正解だったかも(笑)

親密な仲だと思っていたら案外相手の事よく知らなかったりってありそうだなと。

ホントは優しいヒル魔たんなのか、奴隷を効率良く使いこなすための手なのか…書いてる本人にも判りません。

途中端折っちゃったのでそのうち埋めてきたいですけど…何時になることやら。

026

葉柱ルイ

 

025

葉柱ルイ

024

葉柱ルイ

 

023

葉柱ルイ

 

022

62×ルイ

 

ケンカが強くてアメフトやってて。

だからどんなにかイカツい身体をしてるのかと思っていたのに。

「これより、ここを賊学カメレオンズの部室に指定する」

重々しくそう宣言した教室にたむろっていた学生を、彼は1人で排除して見せた。強いのは誰か、ボスは誰なのか、実力で示して見せたのだ。

そんなことなどして見せなくても、全校生徒の前でブチ上げた部員募集の際のタイマンで、俺等は十分に理解しているつもりだったが。

埃まみれで散らかっている室内を見回して、頬の削げた、長い黒髪をガチガチに逆立てた男が彼に声を掛ける。

「どうします、先ぃ片付けますか?」

「要らねぇ。さっさと着替えろ」

「野郎共、入って着替えろ! グズグズするな!」

真っ白になるまで髪を脱色した目つきの悪い男が、彼の言葉を受け俺等の方を振り向いて怒鳴った。

彼に声を掛けた奴も彼の指示を俺等に伝えた奴も、以前は互いに対立し合っていたグループのトップだった奴だ。

10いくつもに分かれて不毛な小競り合いを繰り返していた賊学の不良グループは、ある日突然転校してきた彼の元でほとんど全てが1つに統合されてしまったのだった。

指示に従ってゾロゾロと部屋に入った俺等入部希望者は、思い思いの場所に散って着替え始める。

彼も、部屋の一番奥に陣取って。そしておもむろに白ランを脱ぎ捨てた。

周囲のざわめきが、一瞬にして、消える。

薄汚れた教室には似つかわしくない光景が、そこにはあった。

翻った丈の長い上着の下から現れた剥き出しの長い腕。

交差した腕を追って脱ぎ去られたTシャツの下、惜しみなく晒されるのはケンカとかアメフトとか、そんな荒っぽい事には縁遠そうな、傷跡ひとつ無い薄い色の膚。

全てがなだらかな線でできあがったその身体は、およそ骨とか筋とか、そんな硬さのある物の存在を感じさせないでいて。

いつかTVで見た、セミの羽化を思い出す。

白くて柔らかくて奇妙で、それでいてキレイな。

いっそ優雅な程にゆったりと項に廻された手が金の鎖を外して。

長い指が銀色の指輪をひとつずつ抜き取って行く様を、俺は呆然と見守っていた。

「何ジロジロ見てやがる。俺の身体がそんなに面白ぇか?」

惚けた様に見蕩れる俺の視線に気づいた彼が、不快そうに鼻を鳴らして近付いてきた。

周囲の人間がさり気なく視線を外す様子が、視界の端に映る。

多分、他の連中も彼に見蕩れていた。俺程バカ面ぶら下げて、あからさまに凝視していた奴は居なかったというだけで。

「そ、そんなつもりじゃ…わぁ!」

襟首を捕まれて、引き寄せられる。

至近距離から、挑む様な攻撃的な目で、見据えられた。

「じゃぁどんなつもりだ? 言ってみろ。あァ!?」

ちっぽけな脳をフル回転させる。

それでも彼を形容する言葉なんて1つしか見つからなくて。

「えっと、キ、キレイだと…」

予想外だったらしい俺の答えに、彼は一瞬ポカンとした表情で俺を見つめた。が、それも束の間。

クッ

笑いの形に歪む口元。次の瞬間、

ドガッ

咄嗟に、何が起こったのか判らなかった。

殴られて、ロッカーに叩き付けられたのだと、理解できたのはひしゃげたドアを滑って床に倒れ込んだ後の事だった。

ロッカーの上に積み上げられていたガラクタが、衝撃で立ち上がれない俺の上に降り注ぐ。

カツカツと、硬い革靴の底が床を打つ音が近付いて来た。

「今まで聞いた中で1番面白ぇ冗談だったな、今のは」

背中を強く打って息もできずにうずくまっていた俺の鳩尾を、彼は容赦なく蹴り上げた。

「ガッ、は」

「ナメるな」

痛みに呻く俺を、無慈悲な瞳が見下ろす。

その目を見て、酷く傷ついていると、思ったのは何故だったのか。

目が合ったのは一瞬だけ。

興味を失った様に踵を返して、彼は部屋中に轟く声で怒鳴った。

「全員グラウンドへ出ろ! これから入部テストを始める!」

そしてそのまま教室を出て行く。1度も振り返らずに。

「おい、生きてっか?」

一緒に入部希望で来ていた相方が、声を掛けてきた。

「痛ってぇ…」

頭と背中と腹と。身体中の痛みに顔をしかめながら、何とか身を起こす。

「なぁ、やっぱ止そうぜ。絶対やべ〜よ、ここ」

キョロキョロと周囲を見回しながら囁いてくる相方を尻目に俺は、骨が折れてないか自分の身体を確かめて、よろめきながらも立ち上がった。

「俺、行くわ。受かるかどうか判んねぇけど。無理して付き合わなくてい〜ぜ。ヤバそうなの、判るし」

ドアに向かって歩き出す。

「わ、判ったよ。俺も行くって!」

「付き合いイイなぁ、お前」

慌てて追ってきた相方に、肩をぶつける様にもたれながらドアを出る。

強くて恐ろしくて猛々しい人。

柔らかくて脆くて傷つきやすい人。

身の程知らずにも守ってあげたいと、思ってしまったのが多分始まり。

62のサンドバッグ人生の始まり(笑)まったくもって身の程知らずな。まぁ、思うのはタダだし。

賊学カメレオンズは恐怖政治で動いてます。少なくともルイはそのつもり。

ルイルイ、過去に容姿で絶対いじめに遭ってると思うので。可愛いとか綺麗とか言われても皮肉にしか聞こえんだろうと。

てか、62、ルイにぶん殴られてロッカーにガッシャン、床に転がったところを鳩尾蹴り上げられ。が書きたかっただけなので!

021

露峰メグ×葉柱ルイ

とある日の放課後。

ギャーともキャーともつかない女の悲鳴が賊学カメレオンズの部室に響いた。

「ちょ、ちょっとアンタ! 女子の前で何ポイポイ服脱いでんのよ!」

「あ? 部室で着替えね〜で何処で着替えろっつ〜んだよ」

「だ、だからってねぇ、イキナリ脱ぐことないじゃないのよ!」

真っ赤になってルイさんの方を見ない様にしながら、マネージャーが怒鳴っている。

口は悪いけど、結構純情なヤツだよな。

ちなみに俺等も着替えの最中のはずだが、彼女の眼中には入ってないらしい。

「バ〜カ、嫌ならどっか行ってろ」

「バカはどっちだ! クソ葉柱! テメ〜なんか犬に踏まれて死んじまえ!!」

バン

捨て台詞を残して部室を飛び出してく女子マネ。

「何だ? アイツ。ヘンなヤツだな」

不思議そうに首をひとつ傾げると、ルイさんは着替えを再開した。

あ〜あ、気の毒に。

彼女の気持ちを知ってる俺は(というか、全員知ってる。知らないのはルイさんくらいのモンだろう)、ちょっとだけ彼女に同情した。

カメレオンズ初期の日常。そのうちマネも慣れてくるんじゃないかと。

ルイにデリカシーなど、期待するだけ無駄なのです(笑)